お知らせ
毎日新聞に当院の記事が掲載されました
記事内容:
◇「受け皿」広がらず
「だいぶ落ち着いてきたね。夜は眠れているかな」。3月上旬の午後、埼玉県所沢市の「みずの内科クリニック」の水野康司院長(60)は市内の男性(80)宅を訪れ、座椅子に座る男性の胸に聴診器を当てた。
男性は呼吸器疾患で呼吸困難となり、県内の大学病院に5日ほど入院後、2月半ばに退院した。妻は入院中で再び1人暮らしとなったが、同クリニックは「24時間対応」を掲げる。水野院長の週1度の往診に加え、週に2度の訪問看護も受ける。長男(54)と交代で泊まり込む長女(58)も「本当に心強い」と言う。
日本の年間死亡者は約120万人。その8割は病院で死ぬ。20年後は高齢化で死者数が160万人台に届くとみられ、お年寄りを病院でみとることは難しくなる。医療費抑制にもつながるとして、国は在宅医療推進の旗を振ってきた。7対1を優遇する傍ら、他の病床は減らし、軽症患者を自宅へ帰そうというのがその中心だった。だが、水野院長のような医師は少なく、国の政策は患者の行き場を狭めた。そこで14年度から、病状が回復し自宅へ戻る手前の患者を受け入れる病院を優遇する。早期退院に向けたリハビリを重視することなどを条件に、入院費を高くした「地域包括ケア病棟」の新設が柱。病院も活用する在宅路線への修正だ。
東京都大田区の大森山王病院(60床)。戸金隆三院長(63)はスタッフに「生き残る道は在宅医療しかない」とハッパをかける。近隣の30近い競合病院を横目に7対1には見切りをつけ、地域包括ケア病棟への移行を視野に入れる。しかし、戸金院長は「ハードルは高い」と明かす。移行には専従リハビリスタッフの配置が必要になる。退院患者のうち他の病院に転院せず自宅に戻った人が7割以上といった条件も課される。
地域包括ケア病棟も広がりが見通せず、重症病床を退院する人の受け皿が増えない中、厚労省は一転して介護型の療養病床全廃方針を撤回する意向だ。依然、入院ベッドを巡る政策の揺れは続く。
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